計算工 ①

計算工は看守の許可なく自由に工場内を歩き回ることができ、

交談許可をもらえば誰とでも話ができる。

刑務所とは自由を奪う為の場所である。

 

規則によって自由は制限され、規則を守らない者には

容赦なく罰を与える。

良い子にしていれば制限を徐々に緩和していくという

考えが原則である。

 

人間としての尊厳、人権など存在しない無法地帯である。

看守に逆らえば命を落とすこともある。

名古屋刑務所の事件などがそうだ。

 

刑務所という所に来てから、自由がどれほどありがたいものなのかを

思い知らされる。

 

そのような観点からすれば計算工は一番、楽な仕事と言える

刑務所の作業場は何班かに分かれ、各班に必ず班長がいる。

 

班長になると班内であれば自由に立ち歩け、

同じ班の受刑者との交談が認められる。

 

作業中に歩き回れるのと、歩き回れないのとでは大違いだ。

班長になりたがる受刑者は多い。

 

班長になると帽子に赤い線が一本巻かれる。

班長のことを赤帽や立ち役と言ったりする。

 

赤い線を巻くには堅気でなければ巻けないという条件がある。

現役ヤクザは班長にはなれない。

 

班長になるには刑務所が指導する離脱指導というものを

受講しなければならない。

ヤクザ者は刑務所でも不当な扱いを受ける。

一般受刑者とは少々処遇が異なってくる。

 

ヤクザ者は初犯であったとしても、累犯刑務所に送られる。

作業は、一般工場の中でも一番きつい、金属工場に配役され、

仮釈放の対象から除外される。

 

現役ヤクザでも、離脱指導を受けて班長になる者がいる。

どうせ刑務所にいる間だけで娑婆に出れば関係ない、

 

一時的な手段なのだからと考える者と、反対に、

離脱指導など嘘でもヤクザを辞めるなどと言えるものか、

ヤクザは俺の生きざまだという筋金入りのヤクザもいる

 

作業で楽はしたいがヤクザとしての矜持がそれを許さない

という考えの者もいる。

 

離脱指導を受けて仮釈放で1日でも早く帰りたい、

そのためなら官(刑務所)の言うことを聞いてゴマを

擂らなければいけない。

 

一方ヤクザは満期で上等だ

官に媚びることもなく務めを終えるというのが

本当のヤクザのスタイルだ。刑務所側もそのようなヤクザに一目置く。

 

実際、離脱指導を受けるヤクザ者を受刑者たちは陰で笑う。

誰もが1日も早く帰りたい、

 

しかしヤクザは組の看板を背負って務めているのだから

そんな恰好の悪い務め方は出来ない。

 

延いてはは自分とこの親分が笑われることになる

私は後者の考え方であった。

 

それまで何度も班長になってほしいと工場長から頼まれたが

「そんな仕事は堅気の仕事でしょう」

と言って断り続けてきた。

 

余談になるが私は裁判でもヤクザを辞める気はないと陳述した。

すると裁判官から、

「組織にいれば、これからも上の者に命令された場合、

また同じことを繰り返すということですね」

と問われた。

私にしてみれば、悪い奴を捕まえて懲らしめてやったとしか

思っていない。

 

反省する気持ちなど微塵もない。裁判長に向かって

「これからは、NOと言えるヤクザになります」

と言ってやった。傍聴席を見ると誰も笑っていない。


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