次に陰金という悪疾だが、
この白癬菌も進化し人体に対し、ただならぬ影響を
及ぼす感染症だ。
予防策としては風呂の端には行かない
ということぐらいしかない。
大阪刑務所の風呂の水は1週間に1度だけ全部入れ替える。
間の日は毎日500人もの入浴があるというのに
半分しか水を入れ替えない。

水道代が高くつくからだ。
刑務所は水道の使用にすこぶる、煩い。
年間1億円近くの水道代がかかるらしい。
風呂の近くには大きな、ろ過装置が設備されており、
一度使用した風呂の水は再度利用される仕組みになっている。
シャワーの水も同じ水が使用される。
どんな細菌が生息しているか分からないので、
身体に傷がある場合は絶対に入浴するなと言われる。
入浴の順番は工場ごとに毎日違うのだが、
最後の方になると風呂の湯は濁り、
垢や陰毛だらけの想像を絶する風呂になっている。
受刑者が入浴する前に工場の班長らが
先に浮いている垢や陰毛を網で掬うが、
気休めにしか過ぎず、汚いにことに変わりはない
浴槽の角部分にはどうしても垢などが溜りやすいので、
なるべく中央で浸かることが望ましい。
余談になるが工場長が規則違反を厳しく取り締まることを、
工場を締めるという。工場をあまり締めすぎると、
入浴中に糞をする奴が出てくる。
工場長に対する無言の反抗というやつだ。
糞はプカプカと浮いて水面を漂う。
糞が発見されると大騒ぎになり、
工場長はすぐに長靴に履き替え網を持って
プカプカ浮いている糞を掬わなければならない。
普段威張り散らしているので、
まあ滑稽な姿を拝見することができる。
日本人は全員、大急ぎで浴槽から上がりシャワーを浴びる。
しかし、中国人は漂う糞を横目に
何事もないかのように湯船に浸かっている。
国が違えば文化も違うというが、
流石に4000年の歴史をもつ国だけあって
少々のことでは動じない。

陰金という悪疾はとにかく痒い。
私も一度刑務所で陰金になったことがある。
金玉に米粒ぐらいの大きさで小さく
白くなっている部分がある。
こいつが兎に角、痒くて、痒くて、
気が狂いそうになるぐらい痒い。
掻くとすごく気持ちがよい、
金玉に天使が舞い降りたような心地になる。
隔靴掻痒、まだ手が届く範囲でよかった。
陰金も白癬菌の一種だ。
米粒大であれだけ痒いのだから広がって
金玉全体にできたらと思うと気絶しそうになる。
後はツメ水虫だ、これも白癬菌だという。
ツメが白濁してボロボロになる。
平成17年からはツメ切りを消毒するようになり
感染は減少した。

現在では自分専用のマイ爪切りが
貸与されるよう処遇が改善された。
散髪の時にも使用するバリカンから感染する病気がある。
頭の地肌が真っ赤になって痒くなる。
バリカンを取り替える際にアルコールを
噴霧し消毒していたがこれだけでは菌は死滅しない。
平成17年からは熱湯消毒を実施するようになった。
これによりこの感染症も減少した。
同時に鼻毛を切る、小さいハサミも消毒するよう改善された。
刑務所で患って難儀をするのが虫歯である。
刑務所では歯科治療の順番が
回ってくるまで通常2ヶ月を要する。
痛みのピークはもう過ぎ去っている。
アスピリンは出してくれるが痛みは治まらない。
只管、耐えるしか手段はない。
歯の痛みは1週間を過ぎると少しずつ軽減されてくる。
娑婆だと虫歯の箇所を削り取って、
削った箇所に銀を被せるという
治療を施すが、刑務所にはそんな上等な治療法は無い。
歯科治療の順番が回ってきたときには歯は既に蝕まれており、
選択肢は歯を抜くしかない。
塀の外ならば治療して生涯、活躍したであろう
歯だが仕方があるまい。
歯は親からの授かり物だ。
刑務所という施設に入所したばかりに
大切な授かりものを失う羽目に陥り、
不徳の致す所ですと心の中で母親に何度も謝る。
刑務所で油断をすると大変な目に遭わされることになる。
法務省に属する刑事施設だが同じB級刑務所でも
刑務所によって処遇は異なるという矛盾がある。
神戸刑務所では医療関係が充実しており、
特に歯科治療は民間の歯科医を招聘しており
丁寧な治療を早期に施してくれるので助かる。
歯科治療の願箋を出してから2週間ほどで治療してもらえる。
虫歯の部分を削り取りセメントを詰める
という有り難い治療を施してくれる。
歯を失わずに娑婆での治療が期待できる。
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