刑務所の日常 ①

新しく配役された受刑者は、舎房に帰ってから自己紹介をするが、

その後、話すことは決まっている

 

「懲役、どこどこ務めたん?」、「懲役、何回目よ?」

と最初から複数扱いで尋ねてくる。

 

無礼な質問ではあるが、ここはB級刑務所、

ヤクザ以外、初めてですは無い。

 

天井を見上げ、照れを隠して指を折る。

 

「えーと、管区と」

とこれだけで我々は滋賀刑務所、京都刑務所、大阪刑務所、

神戸刑務所の4つの刑務所を制覇したことを

簡単に把握することができる。

 

もうすでに4つは計上されている。

少年刑務所も合わせると片手の指では足りない。

もう片方の指も加える。

 

「後は広島、新潟、岐阜」

などと、恥部を披歴するのだから、憚りながら答える場面であるが、

次第に胸を張り、何故か誇らしげだ。どっしりと座り直す。

 

「えーと、どこまで言うたかな?」

と分かっているのに、とぼける。

 

流石、ベテラン、箔のつけかたが上手い。

いよいよ両手では数えられなくなる。

 

「まあ、大した刑やないけど徳島10年務めたわ」

と謙遜しているかのように見せかけて、

最後に自分の一番、長かった務めをひけらかす。

 

「ションベン刑やけど」

と最後に付け加え、再度、箔をつけることを怠らない。

 

娑婆では徳を積むというが、B級刑務所では

犯歴を積み重ねることに意義があるようだ。

 

沢山の務めを終えた者ほど位が高い。

過ちを犯した数を競い合うのがB級刑務所の習いである。

 

一般社会の会社が刑務所の工場に相当する、

家は舎房ということになる。

 

社会と違うところは四六時中、同じメンバーと居るということだ。

舎房のメンバーが、各班で作業をしている。

仕事の加減で人員が決まり、20名の班もあれば、4名の班もある。

 

一つの工場に80名が収まり、集団で生活をする。

工場という枠の中に家と会社がある。

 

朝夕の食事は舎房だが、昼食は工場の食堂で食べる、

決められた席で、15分以内に食べなければならない。

早く食べる癖がつく、社会復帰をしてもその習慣はぬけない。

 

週二回の入浴日以外は毎日40分間の運動時間が設けられている。

監獄法が改正されてからは毎日、運動ができるようになった

 

刑務所の中にも暴走族はいる、いびきのうるさいこと、

大変迷惑だ。本人は悪気がないのだから怒るわけにはいかない。

 

人間、睡眠を妨害されることほど、腹の立つことはないだろう。

平成17年から、全刑務所で耳栓を購入できることになった。

 

雑居には掃除当番や炊事当番がある。

炊事当番といっても食器を洗うだけだ。

 

しかし冬場は結構こたえる、水しか出ないのだから。

毎週、当番は交代することになっている。


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