話が刑務所から逸脱したので、刑務所の工場に戻そう

 

工場には必ずと言っていいほど舎がある。

舎というのは簡単に言えば仲間だがそんな生易しいものではない。

 

義兄弟という縁で繋がっている仲間だからだ。

ヤクザでいう兄弟杯を交わした者同士ということで、

他人同士では、あるが兄弟のような関係になるということだ。

 

要するに契りを交わした仲間のことを舎という

専ら、舎を組むのはヤクザ者に限られる

 

舎の誰かが、ケンカになると舎は全員でケンカに参加する。

舎のケンカは、大きなケンカに発展することが多い。

舎同士のケンカならば尚更だ。

 

刑務所側(以下「官」という)は舎を作ることを不良集団形成と呼び、

懲罰の対象としている。

 

刑務所で縁を持つ者は多い。

舎房や工場で酒の代わりにお茶や水で盃事をする。

 

刑務所内での生活を過ごしやすくするために縁を持つ者も多い。

 

工場で兄貴だの兄弟だのと、呼び合うことによって、

周りに圧力を与えることができる。

 

決して格好のよいものではない、刑務所で舎を組む人間は娑婆でも

徒党を組み1人ではケンカもできない者が多い。

 

工場に、新入が配役されてきた時は、

私がいつも工場の決まりごとを説明した。

 

この工場で舎は、組まないようにお願いしますと、

最初に言うようにしていた。

 

私たちの工場には舎というものは存在しなかった。

官は、舎を組んでいると判断すると徹底的に舎を潰しにくる。

 

舎の解体を狙い、普段注意することのない些細な脇見や不正交談などを

厳しく取り締まってくる。

 

官は、どのような手段を使ってでも、取り調べに上げ、

工場から追放するように仕向けてくる。

 

たとえ娑婆からそのような関係があったとしても、

運動時に兄貴と呼んだりすると官に目をつけられることになる。

 

刑務所では、同じ組織の者同士が、

同じ工場で務める事はほとんどない。

 

一緒にすると舎を助長するようなものだから、

官は特に注意して配役先を決める。

 

舎どうしのケンカということが、判明した場合、

工場長は、受刑者の管理ができていなかったという責任で即、

工場長を交代させられる。

 

舎のケンカで、ケンカに参加しなかった者は、

休憩時間に何故参加しなかったのかなどと、

他の受刑者から詰められ、どのみち工場から

出て行かなければならない羽目になる。

それならばケンカに参加して上がる方がマシだ

取り調べになって工場から出て行くことを上がるという。

看守から上がれと言われれば、取り調べということになる。

 

自分から上がりますと言う場合もある、上がり方は担当台に行って

 

「作業が合いません」

と言えば、作業拒否で取り調べになる。

 

要するに、工場から出ていくことを上がると表現する

 

受刑者同士が口論になった、それを見ていた友達思いの友人が、

相手を殴ってしまった。

 

こうなったら、本人も殴らない訳にはいかない。

一緒になって殴った結果、相手に思いがけない重傷を負わせてしまった。

 

これで、二人共が事件送致となり、出所が半年延びてしまった。

友達思いの、友達のおかげで大変なことになる場合がある。

 

現在は、2名以上で暴行を働くとすぐに事件送致となり

刑事事件として扱われることが多く、刑期もその分、

増して余計な務めをしなければならない。

 

刑務所では、舎弟を作りたがる者がいる。

強そうな者から舎弟になれと言われれば、気の弱い者なら圧力に負けて

 

「はい」

と返事をしてしまう。

 

刑務所というところは逃げる場所がない。

嫌でも毎日顔を合わさなければならない

誰もが、波風を立てずに受刑生活を終えたいと願っている

 

反対に強そうな者の所に、シッポを振って、

舎弟になりたがる者もいる。

 

舎弟になると肩で風を切って歩くようになり、

話し方もヤクザ言葉に変わる。

虎の威を借りてというやつだ。

 

娑婆だと滅多に組長クラスに近づけるチャンスはないが、

刑務所では隣で作業をしているオッチャンが組長ということが多々ある。

 

いずれにせよ刑務所で持つ縁というものはよい

結果を残すことは少ない

 

刑務所にいる時だけで娑婆に出ると

連絡が取れなくなる者がほとんどだ。

 

そのような残念な思いをするぐらいなら、

刑務所で縁などというものは持たない方がよい。


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です