私の事件 ①

ある日、事務所で当番をしていた。

そこに山本の叔父貴から電話があった

「ああ、ワシやけど」

「ご苦労はんです」

 

「あのなあ、今からちょっと事務所出れるか?」

「何ですの?」と答えた、すると叔父貴は

 

「今から、悪い奴をさらいに行くねんけど、

ちょっと力貸してくれへんか」

と言う

 

「ええ、よろしいでっけど」

「ほな、三浦も連れて岸和田のインターまですぐに来てくれへんか」

 

「はい、わかりました」

と答えて電話を切った。三浦は部屋住みの若い者で、

 

親分の友人の子供だった。

四国で悪さばかりするので行儀見習いのため事務所で預かっていた

 

あまり群れて行動するのは嫌だったが叔父貴の頼みなので仕方が無い。

三浦を連れて私の車で岸和田インターに向かった。

 

途中、携帯で叔父貴と連絡を取りながら計画を聞いた。

 

するとさらう相手は地元の実業家で方々から10億ほど集めて

株式の投資をして損益を出したと偽り金を返さない、

 

このような手口を繰り返し行っていたという。

要するに詐欺師であった

 

叔父貴が請け負った債権は2億円だった

後に知ったことだがこの詐欺師には方々から

被疑届けが出ていて私の事件後、暫くして警察に逮捕された。

 

インターで叔父貴と合流後、関西空港に向かった。

タクシー降り場で待機していると詐欺師が一人で降りてきた。

 

60歳くらいのおっさんだった。すかさず3人で歩み寄り、私が

「ワレこら、車に乗れ」と言って背広の襟を捕まえた

 

「分かってますやん、行きます」

と言ったので、襟首を捕まえた手を離してやった

 

逃げられないように三浦を左に配置し、私が右を固めて

私の車に乗り込んだ

 

後の相手側の調書では両脇を抱えられて逃げることが出来なかったと

供述している

 

ここで犯罪の構成要件である営利略取が成立したことになる

 

誰も身体には触れていない、自分から自発的に車に乗り込んだのだ。

何も無茶はしていない。しかし裁判官は原告の言うことを信用する

 

そして叔父貴の車を先頭に叔父貴のマンションに向かった。

その途中、叔父貴から電話があり

 

「ちょっと、目隠しをしといてくれへんか」

と言われたので後部座席の三浦に

 

「そこにあるタオルで目隠しをしとけ」

と言った、目隠しをしたまま叔父貴のマンションに着いた

 

目が見えていないので両脇を抱えて階段を4階まで上がらせた。

 

マンションに着いてN塚を奥の部屋まで案内して椅子に座らせた

私が玄関の方に歩いていくと

 

「お前が悪いんじゃ」

という罵声と共に

 

「バシン」

という音が聞こえた、ああ叔父貴が殴ったのだなと思った

N塚は

 

「すいませんでした、ワシ身体悪いんですわ、無茶せんといて下さい」

と言っていたので私は

 

「おっさん、どこが悪いねん?」

と優しく尋ねてやった。N塚は

 

「心臓が悪いんです、薬を飲ませてください」

と懇願してきたので、水を用意して目隠しされたN塚に

 

「薬、どこにあるねん?」

と尋ねると

 

「鞄の中です」

と言うので鞄の中から薬を探し出して封をきって、

口の中に入れてやり水を手に持たしてやった。

なんて親切なんや私。

 

それから叔父貴はN塚に銭の段取りをさせた。

泉州銀行岸和田支店の支店長に電話をして5千万円を用意させた

 

私は親分の用事があったので

 

「叔父貴、もう5千万用意しよったんやから、ガラ(身柄)

離したらな、あきませんで、事件になりまっせ、

ほなワシいきますよってに」

と言って私一人だけがマンションを出た。N塚をさらってから

1時間ぐらいの出来事だった


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