特別公務員陵虐暴行罪

N本はF級受刑者(外国人受刑者)を嫌う。

配役されると工場の担当台で工場長から訓示を受ける。

 

この時N本は必ず言う事がある

大抵のF級の罪名は窃盗か若しくは強盗だ。

 

N本は配役されてきたF級受刑者に、

 

「おまえのお母ちゃんもドロボーか?」

と言う。受刑者が何も言わないでいると、

 

「何か言え」

と言う。お母ちゃんは関係ないだろう。

 

「お母ちゃんにしろと言われたんか」

と、更にお母ちゃん攻撃が続く。

 

逮捕されてから母親と面会ができた

F級受刑者は少ないだろう。

 

ここで故郷の母を思い出すと自然と涙が頬を伝う。

N本はこの光景が好きで、好きでたまらない。

 

訓示が終わった後いつも、

 

「泣かしたった」

と私の所に嬉しそうな顔をしながら報告しにくる。

お母ちゃん攻撃は反則技だろ。

 

刑務所では午前と午後に一回ずつ休憩がある。

号令がかかると一旦、工場中央に3列横隊で

整列し点呼を取ってから食堂に入る。

 

「番号」

という号令がかかると前列、右側より番号を数えて行く。

間違うと最初からやり直さなければならない。

 

刑務所ではヨン(4)とナナ(7)は無い。

シーとヒチと数える。だから

47はヨンジュウナナではなく、シジュウヒチと数える。

 

番号を取り終えると看守の号令に合わせ歩調を取り、

食堂まで行進で移動する。

 

看守が拡声器で歩調を取る、イチ、ニイと。イチの時には

左足が前に出ていないといけない。

 

この日、中国人が配役されてきた。

蔡(ツァイ)(29) オーバーステイ 懲役6月

 

ツァイにしてみれば号令に合わせて行進することが、

初めてなので、なかなかうまくいかない。

 

N本は自分がなめられていると思ったのか、

ツァイを隊列から外し、

 

「アホかお前は なめとったらあかんぞ」

と言って手に持っていた針箱でツァイの頭を殴った。

その後ツァイだけを残し、全員を食堂に入れ個人指導を始めた。

1人で行進だ。N本が歩調を取る。左、右、左、右・・・

 

ツァイが間違える度に2発、3発と針箱で頭を殴る。

徐々に強くなっていく。

 

ツァイはお母ちゃん攻撃に耐えて泣かなかった。

N本は泣かないツァイが憎らしいのだ。私はN本の近くに行き、

 

「ワシが教えときますから」

と言ってその場を収めた。

 

ツァイは文句をいい返すタイプではない、

絶対に反抗しないと思ったから殴ったのだ。

N本が日本人を殴る事はない、訴えられるからだ。

 

N本は、F級受刑者の中でも中国、台湾、韓国を特に嫌う。

何もしていないのに韓国人だというだけで作業場の班長に

 

「あいつを虐めろ」

と指導する。人種差別に他ならない。

国家公務員であるという自覚が足りない。

 

N本はその場の思いつきで恣意的な処遇をする。

だから受刑者と衝突する。

 

その結果、貧乏くじを引かされるのはいつも受刑者だ。

反抗的な受刑者は徹底的に虐めて工場から放り出す。

 

N本は受刑者全員に追従してもらわなければ気が済まないのだ。


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