最強の取り立て

債権回収は中々難しい仕事だ、それは堅気さん相手の場合だけだ。

 

ヤクザには、とても苦手な者がいる。それは警察でもなくて

刑務官でもない、答えは自分よりも強いヤクザだ。

 

ヤクザは自分より弱いヤクザにはめっぽう強いが

自分よりも強いヤクザにはめっぽう弱い

 

私は石材業で収入を得ていたわけだが、

それに加えてヤクザ専門の債券回収も行っていた。

 

ヤクザ同士だと話が早い。

双方の親分の顔を立てて、と言う話ができるからだ

話がこじれれば殴る、正に暴力そのものだ

 

ヤクザはどれだけ殴っても警察には行けない

そんなことをすれば組が笑われるだけだ

 

ヤクザも人の子、殴れば痛がるし、血も出る

ヤクザの世界なんて、こんなもので力が全てだ

 

私には信条がある。堅気さんと酔っ払いと女には

絶対に暴力を振るわない

お灸を据えてやりたい堅気も沢山いるが我慢する

 

堅気さんは、取れない債券をヤクザに頼む

ヤクザは取った金額の半分を貰うことになっている。

 

元々、取れない債券なのだから1円でも銭になってくれれば

それでよいと考える人達だ。要するにヤクザを利用するという事だ

 

今回の事件はいい例だ、法的に取れない金をヤクザに頼む

警察の取り調べでは、そんな事は頼んでないとシラを切る

 

その二枚舌こそが、暴力よりもよっぽど、たちが悪い。

 

都合のいい時にだけ呼び出し、

用が済めばゴミ箱に捨てる「便利な狂犬」

程度にしか考えていないのだ

 

だから、私は堅気さん相手の債券には一切、手を出さない。

どうせロクなことにならないからだ。

 

ヤクザ者の債券は意外と簡単に回収することができる

 

ヤクザ者の中には完全に開き直る者もいる

小切手の裏にハンコを付いておいて、

 

「好きにして、おくんなはれ」

というヤクザがいる。こんな奴はすぐに殴っても銭にならない

殴るタイミグと言うものがある。

私の場合は普通とは違う

 

「そしたら、この冷蔵庫、何ぼで、売れるか試してみろ、

冷蔵庫の中身、全部出せ、それから家の前に出せ、

5000円と言う紙を張れ、誰か買うかも分からんやろ」

と言って、冷蔵庫の中身を出させる。

 

ここまでする取り立て屋はいない。大抵の者はここで

 

「分割にしておくんなはれ」

と泣きが入る。分割は必ず失敗する、若しくは

 

「明日まで、待っておくんなはれ」

と言うが私の場合は待たない。

 

「明日にできるのならば、今日にでもできるやろ

出来るまでここで生活させてもらう、

布団、敷けや、今日はもう寝る」

とヤカラを言う。

 

堅気さんにここまですれば、すぐに警察に通報される

しかし、相手はヤクザだ、どちらが鉄板かを問われている

 

鉄板とは図太いということを表現している

刑法に完全に抵触している。

コンビニでATMから引き出させるか、誰か知人に借りさせる。

 

「マグロ船でもええぞ」

と言う。支払い方は本人の自由だ

 

最初から無茶をする

 

「親分に電話せい」

と言って詰める。

 

ここまでするヤクザはいない。

相手もここまでされた事は無いだろう

想定できない範囲だろう

 

「財布、出せ」

と命令する。

 

「お前、好きにしてくれて言うたな、早よ、出せ」

今度は恐喝だ、普通なら完全にアウトだ

 

本当に最後の手段を使う

 

「段々、イライラしてきた、もう銭いらんわ、〇にさらせ」

と言って、懐から拳銃を取り出す。

ヤクザは拳銃の怖さを知っている

 

ここで顔面を殴る。めったに殴られたことがない

ヤクザはこれで落ちる

 

拳銃を見せてから殴ると効果は絶大になる

ヤクザ相手の取り立てに拳銃は必須アイテムだ。

 

このようにヤクザ相手の方が簡単に取れる。

 

ヤクザにルールなどという言葉は一切無い、

それがヤクザの世界なのだから


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