拳銃強奪 ①

従弟の話が出たのでもう少し従弟のことを話させてもらう

 

私は従弟のおかげで、危うく命を落としそうになったことがある。

従弟の債権回収を代行してやった時に、

チャカ(拳銃)で至近距離から2発も弾かれたことがある。

 

幸いにも私の身体には着弾しなかった。

チャカの扱いに慣れていない極道でよかった。

 

従弟はヤクザをしていると言っていたが

実際は、たこ坊主だった。

 

たこ坊主とはたこ焼きを焼かされているだけで

ヤクザの物事には関わらせてもらえない。

たこ焼き職人のことだ、決してヤクザだとは言えない

午前中は9時から玉出の商店街で、午後からは西成で、

そしてまた3時頃から玉出に戻り11時頃までたこ焼きを焼く。

疲れて帰って寝るだけという生活を送っていた。

 

従弟も出来が悪いので時々、売上金を使い込んでいた。

 

ある日、兄貴1万円貸してくださいと電話があった。

事情を聞くと、どうやら競馬に使ったようだ、私は

 

「正直に言え」

と言って電話を切った。従弟は正直に言って痛い目に遭わされたようだ。

 

従弟はそんな生活が嫌になり、親分(久川)のところから

逃げて実家に戻った。

 

久川はしつこかった、従弟の実家(伯母の家)に行って

金属バットで従弟を殴り、腕を骨折させた。

 

伯母も警察に言えなかった様で困り果てて泣いていた。

従弟は連れ戻され腕にギブスをはめてたこ焼きを焼いていた

これには流石の私でも怒りを覚えた。

 

ヤクザの世界では親子関係に口を出すことは

ご法度とされている。

出来が悪ければ親に殴られる、当たり前のことだ。

 

久川は西成ではちょっと顔の知れた人物でうるさいと言われていた

久川はY組、K会、Y組の幹部だった

 

私は当時Y組のN会に所属していた。

N会は売り出し中でY健をも凌ぐ勢いでイケイケの組だった。

 

私は幼少期から伯母には世話になっており、

伯母はさぞかし恐かっただろうと想像すると

久川を許せなくなった。

従弟の今の境遇からも救ってやりたかった。

 

久川に電話をした

 

「従兄として賢治の進退について話したいことがあるので

会ってもらえませんか」

と言った。久川は承諾してくれた。

 

玉出にある商店街の居酒屋で会うことにした

 

私が考えていたことは、会ったときに久川に

何か落ち度があれば、一気にどつきまわして

久川から賢治を奪還する算段であった。

 

事の発端は刑務所から送られてきた一通の手紙だった

手紙の内容は

 

「もうあの生活にはもどりたくないのです、

それと兄貴分(井久保)に160万円の

貸付がありますので回収をお願いします」

というものだった

 

賢治が父親の保険金から井久保に貸していたのは博打の借金だ。

 

井久保と久川は兄弟分だった。

井久保は順調に追い込んで働いて

毎月10万円ずつ返します、ということになった。

 

井久保はヤクザなので、かなり手荒な真似もした。

久川はさぞかし気分が悪かったことだろう、

久川からすれば私は目の上のたんこぶだったに違いない

 

当日、玉出の居酒屋で私が先に行き久川を待っていた。

久川は2人で来た

 

「はじめまして、久川と申します」

もう一人も名乗ったが覚えていない

 

「はじめまして、私が従弟の芹沢です」

と名乗った。

 

テーブルに着くなり久川は酒を頼んだ

 

「ビール一本にグラスは3」

酒が運ばれてきて久川は私に向かって

「まあ、一杯」

と酒を勧めてきた

 

私は

 

「お前さん、何年ヤクザしとんねん、

賢治の進退決める大事な話で酒はないやろ、

おかしな真似すなよ」

 

と言ってやった。続けて

 

「賢治は誰かと杯を交わせる人間やない、ワシの舎弟や」

久川が親子関係を結ぶ前から、私の舎弟だから、

口を出すなということだ

 

久川にはしゃべらせない。

 

「賢治が懲役から出てきたらワシが連れる、

文句あったらワシに言うてこいや、話は以上や」

と言って席を立った

 

ヤクザは力で勝負が決まる。N会の圧力が効いている。

久川からすればさぞかし悔しかったに違いない


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