数少ない楽しみの中で、三度の食事は受刑者にとって最大の楽しみと言える。

朝と夕方は舎房で食事をするが昼間は工場内にある食堂で全員一緒に食事をする。

これはどこの刑務所でも同じだ。

 

各刑務所によってメニューは様々だが、大阪刑務所にはパン工場があり

朝食はパンとジュースにマーガリンなどの塗り物が付く。

 

パンも工夫されていてパンの中にドライフルーツや干しブドウ、

チョコチップが入っている。ココアパンは廃止されたようだ。

 

神戸刑務所は大阪刑務所のようにパン工場を持たないため、

朝食はご飯とみそ汁に決まっている。パンはひと月に5回程度、昼食に出る。

 

受刑者はパンの日を楽しみにしているので、パンの日はみんなテンションが高い。

神戸刑務所のパンは俗にいうコッペパンというもので

中には何も入っていないが、やわらかくておいしい。

刑務所では作業によってパンの大きさが違う。

食等というものが決められており、立ち仕事をしている者は

A食、座って作業しているものはB食、受罰中や昼夜独居の者はC食となっている。

 

A食のパンは30センチほどの長さがある。

娑婆では見かけないサイズのコッペパンだ。

私たちの木工場は全員が立ち仕事なので食等はA食だ。

 

夏場だけ、食事の際に円管服の上を脱ぐことができる。

「喫食始め」

の号令で昼食が始まる。

 

受刑者たちは、まず袋からパンを取出し真ん中あたりで二つに割る。

ここまでは何も問題はない。

 

次の瞬間、目を疑った。

受刑者たちは一斉に割った所からパンの中身を

ほじくりだしして食べている。

 

ランニングから入れ墨を放り出したヤクザ者が、

パンをほじって食べているのだ。

子供じゃあるまいし、大人が何をするのだ?

娑婆でこのような光景を目撃したら、危ない奴だと認識するだろう。

 

何故、受刑者はパンをほじるのか、それはパンと一緒に出た

プリンや惣菜をほじった穴に突っ込んでオリジナルのパンを製作するためだ。

 

ヤクザの親分が、よくもまあ照れもせずに、普通にパンをほじって食べている、

極道のすることか。

 

プリンを箸でかき混ぜてほじくった穴に流し込む、プリンパンが完成した。

親分は周囲を見回し「どうや」と心の声が聞こえる。食事中は交談禁止だ。

 

斜め前の席に座る某組織の若頭は、ほじくった穴にぜんざいを流し込んだ、

あんパンの完成だ。満足そうな顔している。

 

すると少し離れた席に座っている関東ヤクザが

「コホン」

と一つ、咳をする、ぜんざいの中にプリンを混ぜている。

スペシャルサンドを作ろうという計画だ。

 

まるで子供が取ってきたカブトムシの大きさを

競い合うかのように誇らしげに周りを見て、

 

仕上げはスペシャルサンドにウインナーを突き刺した。

味はどうでもいいのか?

 

看守は何も注意しない。ごく普通に受刑者の監視をしている。

見慣れた光景なのであろう。

 

夏にはアイスクリームもでる。入れ墨を放り出した極道が嬉しそうに

チュウチュウを食べている。目で合図を送る「おいしいね」と目でしゃべる。

 

パピコもでる。いいヤクザが揃ってアイスクリームを食べている。

この光景を一度、娑婆の人に見せてやりたい。